嘔吐反射対策
嘔吐反射とは?
嘔吐反射とは、異物や刺激などが喉や口腔内に触れることで反射的に起こる防御反応のことです。特に、舌の奥や咽頭(のど)などが刺激されると、脳が異物を排除しようとして吐き気を催します。
嘔吐反射は異物の誤飲や窒息を防ぐために重要な仕組みで、ご高齢の方は、この嘔吐反射ができずに誤嚥性肺炎を引き起こす原因にもなることがあります。
通常はお子様に多く見られるもので成長とともに過敏性は消失していきますが、嘔吐反射が強い方は歯科治療を上手く受診することが出来ず、歯科医院に通うこと自体が億劫になってしまうことも少なくありません。
嘔吐反射の原因と当院の対策
歯科では、治療時に器具が口腔内に入ってくることが多く、歯の型取りが必要な場合は印象材と呼ばれるドロドロとした液体を使用して型取りを行うため、固まるまでの間にのどに流れ込んでくることがあり、嘔吐反射を引き起こしやすくなります。
また、過去に歯科治療でのトラウマがある場合などは、その恐怖心から反射的に吐き気に襲われたり、嘔吐感を感じることもあります。
「気持ち悪い」と感じさせないための当院の取り組み
当院では、嘔吐反射の強い方だけでなく、全ての患者様に「気持ち悪い」と感じさせないよう、様々な対策を行いながら治療を行っております。
いきなり喉の奥に器具を挿入することはありません。患者様へのお声がけを常に大切にしています。
診療台のポジションや頭の位置を、患者様お一人おひとりに合わせて調整します。
適量の印象材を使用し、のどに溢れ出さないようにしたり、硬化時間が速い印象材を使用することで負担を最小限に抑えています。どうしても印象材による型取りを避けたい場合は口腔内スキャナーがございます。触れずに型取りができますので、その際は遠慮なく申し出ください。
バキュームで口腔内を吸う際は、敏感な口蓋垂部付近に触れないように注意して行います。
どうしても嘔吐反射をしてしまう方へ
嘔吐反射は決して恥ずかしいことではありません。
当院では嘔吐反射が強い方のために、患者様に合わせてさらなる対策も行っております。
①表面麻酔スプレーの使用
口蓋と呼ばれる上顎の歯の内側の粘膜に麻酔液を吹きかけることで反射を鈍くすることができます。当院で使用する麻酔液は、「キシロカインスプレー」と言うスプレー状のため、患者様が痛みを感じることもありません。
麻酔により口腔内の感覚を鈍らせることで刺激を感じにくくなり、嘔吐反射が起こりにくくなります。
②光学印象カメラによる型取り
アルジネイト印象やシリコン印象などでの歯の型取りが苦手な方は、歯科用特殊カメラによる光学印象をおすすめいたします。従来の印象材を使用した型取りと比べると不快感が非常に少なく、型取りにかかる時間も短いため、ほとんど嘔吐反射が生じずに型取りが可能です。スキャンした画像データを技工所に送ることで補綴物が作られます。
ほとんどの歯科では被せ物(補綴物)の作製のみにしか使えないことが多いですが、当院で導入しているスキャナーは矯正の装置の型取りも可能です。型取りが苦手なお子様にも使用できます。
③ラバーダム防湿
歯根の治療する際は薄いゴム製のシートを使用したラバーダム防湿をして器具や薬品の咽頭への侵入を防ぐことで、患者様の快適さを保ちながら治療を行います。
治療中に口腔内に触れることが少なくなるため、嘔吐反射の軽減に効果的です。
④笑気ガス・静脈内鎮静法
笑気ガスや静脈内鎮静法の活用も有効です。
痛みや怖さを軽減することができるため、リラックスした状態で治療を受けていただくことが出来ます。
それぞれの特長や注意点についてもしっかりとご説明いたします。
嘔吐反射克服のトレーニング
嘔吐反射が強い方は、克服のためのトレーニングを行っていただくことも効果的です。
最初は気持ち悪さを感じるかもしれませんが、毎日舌の歯ブラシを行ったり、のど仏の下の鎖骨と鎖骨の間のくぼみにある「天突(てんとつ)」というツボを指で数秒間押すことで嘔吐反射が和らぐことがあります。
患者様との信頼関係を大切にしています
嘔吐反射は心理的な影響が非常に強いとされています。異物を口に入れられていることへの不安が大きな原因となっていることが多いですが、初診時に嘔吐反射のあった患者様でも、歯科治療に少しずつ慣れることにより軽減する方もいらっしゃいます。少しでも不安を軽減するために、まずは丁寧な説明で治療の意味を良く理解してもらい、歯科医師・歯科衛生士との信頼関係を構築することが大切だと考えています。
治療に関する質問やご不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。